【コラム】夫婦同氏と憲法適合性(続)
民法第750条は、夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する旨規定しています。
民法750条が憲法に適合するか否かが問題となった事案について、平成27年12月、最高裁判所が判断を示しました。
以前のコラムでは、民法750条が憲法13条、14条1項に違反するか、についてふれました。 このコラムでは、民法750条が憲法24条との関係で、最高裁判所がどのような判断を示したのか、簡潔にふれたいと思います。 |
憲法24条1項は、
婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない旨規定しています。
婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない旨規定しています。
また、憲法24条2項は、配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない旨規定しています。
最高裁判所は、
「特に、婚姻の重要な効果として夫婦間の子が夫婦の共同親権に服する嫡出子となるということがあるところ、嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義があると考えられる。また、家族を構成する個人が、同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できるところである。
「特に、婚姻の重要な効果として夫婦間の子が夫婦の共同親権に服する嫡出子となるということがあるところ、嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義があると考えられる。また、家族を構成する個人が、同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できるところである。
さらに、夫婦同氏制の下においては、子の立場として、いずれの親とも等しく氏を同じくすることによる利益を享受しやすいといえる。」
「これに対して、夫婦同氏制の下においては、婚姻に伴い、夫婦となろうとする者の一方は必ず氏を改めることになるところ、婚姻によって氏を改める者にとって、そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり、婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用、評価、名誉感情等を維持することが困難になったりするなどの不利益を受ける場合があることは否定できない。
そして、氏の選択に関し、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすれば、妻となる女性が上記の不利益を受ける場合が多い状況が生じているものと推認できる。さらには、夫婦となろうとする者のいずれかがこれらの不利益を受けることを避けるために、あえて婚姻をしないという選択をする者が存在することもうかがわれる。
しかし、夫婦同氏制は、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく、近時、婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ、上記の不利益は、このような氏の通称使用が広まることにより一定程度緩和され得るものである。」旨判示し、民法750条は、憲法24条に違反しない旨の結論をとりました。
なお、この裁判例では、多数意見は、合憲としたものの、一部の裁判官が違憲と判断しています。
私個人としては、この問題は、家族、氏をどう考えるかという問題とも関連し、難しい問題であると思います。
私自身、この問題について、自分なりの考えをまとめていきたいと思っています。