【弁護士コラム】摘出推定最高裁判
民法772条は、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する旨規定しています。
妻が婚姻中に懐胎した子であっても、常に夫の子とは限りません。
また、嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知ったときから
最近、DNA鑑定の技術が進歩し、また、DNA鑑定にかかる費用が従前より低額になったことなどにより、DNA鑑定によって真実の親子であるか否かを科学的に鑑定することが従来に比べて容易になりました。
妻が婚姻中に懐胎して出生した子について、DNA鑑定の結果、夫以外の男性と血縁関係があると判断された場合、親子関係不存在確認の訴えが認められるか、という問題があります。 |
この問題について、最高裁判所第1小法廷は、平成26年7月18日、DNA鑑定の結果、夫との間に生物学上の父子関係がないことが明らかになっても、嫡出推定の規定が適用される旨判断しました。
嫡出推定の規定が適用される結果、親子関係不存在確認の訴えをもって、父子関係の存否を争うことはできないと考えられます。
もっとも、この裁判では、5名の裁判官のうち、2名の裁判官が反対意見を述べています。
なお、民法772条2項所定の期間内に妻が出産した子について、妻がその子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、嫡出子と推定されないと考えられるので、親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存否を争うことができると考えられます。
この問題は、難しい問題であり、嫡出否認の訴え、親子関係不存在の訴えなどは、弁護士にご相談ください。