【コラム】夫婦同氏と憲法適合性
民法第750条は、夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する旨規定しています。
民法750条が憲法に適合するか否かが問題となった事案について、平成27年12月、最高裁判所が判断を示しました。
この事件は、民法750条が憲法に違反するか否かが争点となっており、原告らは、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求を求めました。
|
民法750条が、憲法13条、14条1項、24条に違反するか、が問題となりました。
このコラムでは、憲法13条、14条1項との関係で、最高裁判所がどのような判断をしたのか、簡潔にふれたいと思います。
憲法13条は、
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」旨規定しています。
最高裁判所は、
「以上のような現行の法制度の下における氏の性質等に鑑みると、婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。」旨判示し、民法750条は、憲法13条に反しない旨の判断を示しました。
次に、憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」旨規定しています。
最高裁判所は、「その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく、本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。」旨判示し、民法750条は、憲法14条1項に違反しない旨の判断を示しました。
民法750条と憲法24条との関係については、別のコラムでふれたいと思います。